《市民病院医療事故多発》「被害者は母だけでない」被害患者家族が心境〜後編
2026年03月07日
赤穂市民病院在籍中に起こした医療ミスで業務上過失傷害罪に問われている松井宏樹被告(47)の裁判で、被害患者の家族が述べた意見書の後編。
* * *
耐えがたい痛みに
「殺された方が…」
手術後、被告人は母に対して「歩けるようになりますからね」と声をかけていました。私にも神経が切断されたとは断言せず、リハビリで回復する見込がある、という説明をしていました。しかし、それは嘘でした。
本件の医療過誤により、母は身体の自由だけではなく、人としての尊厳まで奪われました。
母は、手術直後から自力での起立や歩行ができなくなりました。排尿や排便がコントロールできない膀胱直腸障害も生じました。特に膀胱直腸障害は、母の自尊心を深く傷つけました。生涯おむつの使用を強いられることになったのですが、足が麻痺しているため、自分でおむつを交換することができません。また、肛門括約筋の機能が失われているため、便失禁をしても臭いがするまで気づくこともできません。
自宅で介護をしていた際、母はおむつ交換のたびに、「惨めやわ。せめて自分で交換できたらいいんやけど。面倒かけてごめんな」と申し訳なさそうに言いました。どれほどの屈辱に耐えているのか、今でも母の気持ちを想像するだけで胸が張り裂けそうになります。
また、馬尾神経が切断されていることで、腰部から両下肢にかけての強い疼痛と痺れが今も続いています。神経障害性疼痛は生涯続く可能性が高く、根本的な治療方法は無いと聞いています。
事故から6年余りが経過した今でも、耐えがたい痛みが走ることがあります。そんなとき、母は顔を歪めながら「こんな身体になるんやったら殺された方がましやったわ」とか「安楽死できる方法ないかなあ」と言います。「生き地獄」としか表現のしようがないのです。
* * *
同時進行の訴訟
では過失を否定
母は、二度と自分のような被害者を生んで欲しくないという思いから、被告人を刑事告訴しました。被告人は2024年12月27日に起訴されましたが、刑事告訴から現在に至るまで、被告人から改めての謝罪の申出などは一度もありません。
被告人は、起訴直後からXにアカウントを開設し《※1》、自ら「脳外科医 竹田くんのモデル」を名乗り、2万人以上のフォロワーを集めました。アカウントの説明文には、被告人の実名やA先生のフルネーム、病院名などが表示されています。
2025年1月6日の「無敵の人になったし、ガーシー的に暴露していきますかね《※2》」という投稿の直後から、被告人が起こした一連の医療事故について、事実と異なる内容を発信したり、「脳外科医竹田くんがバズって私が起訴された」と投稿し、まるで被害者家族が描いた漫画が原因で起訴されたという主張をしたり、A先生や私たち家族に対して、侮辱的、攻撃的な投稿を繰り返し行っています。
そればかりか、被害者側を一方的に責め立て、誹謗中傷を繰り返すアカウントの投稿に感謝の気持ちを綴るなど、神経を逆なでするような行為を1年以上にわたって延々と続けています。
民事訴訟の判決後には、判決文の都合の良い部分だけを引用して、まるで原告が敗訴したかのように見える発信も行ないました。その投稿は後日削除されましたが、被告人の身勝手で無神経な投稿によって誤解が生じ、それによってさらなる誹謗中傷を受けることとなり、母も私も、大きな精神的苦痛を感じています。
私には、被告人が自分の責任と向き合わず、Xを用いて、被害者家族のせいで社会的制裁を受けているという構図を作ろうとしているとしか思えません。
被告人は、民事訴訟でも漫画によって社会的制裁を受けているとして、慰謝料の減額を主張しましたが、判決では「医療事故により原告らが受けた損害を検討するにおいて関連がある事実とみることはできない」として退けられました。
また、2025年3月5日に漫画作者である家族が原告となって、被告人に対して起こした債務不存在確認訴訟の中で、被告人は、本件の医療事故について、「過失は無く、医療過誤ではない」と主張しています。心から反省しているのであれば、こんな無責任な主張はできないと思います。
* * *
「毎日診察」
真っ赤な嘘
被告人は、今回の裁判で業務上過失傷害罪の成立を認め、表面上は反省の言葉を述べました。しかし、被告人質問では、母と私が明確に記憶している事実とは異なる明らかな嘘を平気で繰り返しました。
特に、毎日母を診察しに行っていたという話は完全に嘘です。事故が原因で、両下肢に耐え難い痛みが長時間続き、被告人に指示を仰ぐために病棟の看護師さんと一緒に被告人を探し回ったことが何度もありました。勤務時間中にもかかわらず、院内用PHSが繋がらなかったため、やむを得ず、被告人の個人の携帯電話にかけていただいた際、「もう帰宅途中なので、明日でもいいですか」とか「今は対応できない」などと言われたこともありました。
痛みに耐えるしかない母がどれほど苦しい思いをしてきたか、その痛みに耐え続ける母を見守ることしかできない私たち家族がどれほどやるせない思いをしてきたか、被告人は、これまでに一度でも想像したことがあるでしょうか。被告人は、母のことを1日も忘れたことはないと言いましたが、私には被告人の言葉が口先だけの薄っぺらいものにしか感じませんでした。
事故が起きた原因についても自分に責任があると言いながら、A先生へ責任転嫁したり、自己弁護に終始する被告人の態度に、今までに経験したことのないような強い憤りを感じました。
被告人は、母の主治医を外れてから一度も母の病室を訪れたことはありません。また、母に直接謝罪したいという申出などもありませんでした。
事故の後、A先生は、母をほとんど診察しなくなった被告人に代わって、3年以上にわたって主治医を務めてくださいました。
A先生からは、「私も松井先生と同罪です。本当に申し訳ない」と何度も謝罪がありました。強烈な痛みが続いていた時期のことですが、A先生は、どうにかして疼痛コントロールができないものかと右往左往し、謝罪の言葉を延べながら、5時間以上にもわたって痛みに悶える母を励まし続けてくださいました。
母は、A先生に対して複雑な思いがありつつも、心から反省して、自分に寄り添ってくださったという感謝の気持ちもあり、刑事告訴しないと決断したそうです。もし、被告人も、A先生と同じぐらい母に寄り添ってくださったならば、母の処罰感情は、ここまで強いものにならなかったかもしれません。
1年以上にもおよぶ公判前整理手続を経てようやく迎えた公判でしたが、被告人は、弁護側が同意している第三者の医師の供述調書すらまともに読んでいないのではないかと感じました。また、被害者本人である母の供述調書の内容まで否定したり、およそ罪を認めている被告人のものとは思えない他責的な発言や自己弁護の繰り返し、平気で嘘を並べ立てる供述態度には絶望しました。
* * *
被害者は一人
だけではない
母は、被告人の杜撰な手術が原因で生涯自分の足で歩くことができなくなり、生涯おむつを使用しなければ生活できない身体になりました。また、いつ襲ってくるのか分からない痛みに四六時中怯えながら生涯暮らさなければいけません。そして、私は、そんな母の苦しむ姿を見守ることしかできず、母に手術を勧めてしまった罪悪感と後悔に苛まれながら生きていくしかないのです。
被告人の手術による被害者は母ひとりではありません。被告人には、母と同じように重い後遺障害に苦しんだ末にお亡くなりになった被害者が複数存在していることを絶対に忘れてほしくありません。
私は、大切な母の身体の自由を奪っただけではなく、心まで深く傷つけた被告人を生涯赦すことはできません。二度と母のような悲惨な被害者を生むことのないよう、被害者とその家族の気持ちがわずかでも救われますよう、法律で許される最大限の刑罰を被告人に与えていただけますよう、強く求めます。
◇ ◇ ◇
この意見書は2月18日にあった公判で被害患者の長女が自らの声で述べた。松井被告はこの声を聞いて何を思ったか。判決は3月12日に言い渡される。
《※1》被告が刑事裁判の公判で自身のアカウントだと認めた。
《※2》被告が当時勤務していた吹田徳洲会病院は2025年1月に被告を診療業務から外した。
掲載紙面(PDF):
2026年3月7日号(2635号) 1面 (6,542,046byte)
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耐えがたい痛みに
「殺された方が…」
手術後、被告人は母に対して「歩けるようになりますからね」と声をかけていました。私にも神経が切断されたとは断言せず、リハビリで回復する見込がある、という説明をしていました。しかし、それは嘘でした。
本件の医療過誤により、母は身体の自由だけではなく、人としての尊厳まで奪われました。
母は、手術直後から自力での起立や歩行ができなくなりました。排尿や排便がコントロールできない膀胱直腸障害も生じました。特に膀胱直腸障害は、母の自尊心を深く傷つけました。生涯おむつの使用を強いられることになったのですが、足が麻痺しているため、自分でおむつを交換することができません。また、肛門括約筋の機能が失われているため、便失禁をしても臭いがするまで気づくこともできません。
自宅で介護をしていた際、母はおむつ交換のたびに、「惨めやわ。せめて自分で交換できたらいいんやけど。面倒かけてごめんな」と申し訳なさそうに言いました。どれほどの屈辱に耐えているのか、今でも母の気持ちを想像するだけで胸が張り裂けそうになります。
また、馬尾神経が切断されていることで、腰部から両下肢にかけての強い疼痛と痺れが今も続いています。神経障害性疼痛は生涯続く可能性が高く、根本的な治療方法は無いと聞いています。
事故から6年余りが経過した今でも、耐えがたい痛みが走ることがあります。そんなとき、母は顔を歪めながら「こんな身体になるんやったら殺された方がましやったわ」とか「安楽死できる方法ないかなあ」と言います。「生き地獄」としか表現のしようがないのです。
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同時進行の訴訟
では過失を否定
母は、二度と自分のような被害者を生んで欲しくないという思いから、被告人を刑事告訴しました。被告人は2024年12月27日に起訴されましたが、刑事告訴から現在に至るまで、被告人から改めての謝罪の申出などは一度もありません。
被告人は、起訴直後からXにアカウントを開設し《※1》、自ら「脳外科医 竹田くんのモデル」を名乗り、2万人以上のフォロワーを集めました。アカウントの説明文には、被告人の実名やA先生のフルネーム、病院名などが表示されています。
2025年1月6日の「無敵の人になったし、ガーシー的に暴露していきますかね《※2》」という投稿の直後から、被告人が起こした一連の医療事故について、事実と異なる内容を発信したり、「脳外科医竹田くんがバズって私が起訴された」と投稿し、まるで被害者家族が描いた漫画が原因で起訴されたという主張をしたり、A先生や私たち家族に対して、侮辱的、攻撃的な投稿を繰り返し行っています。
そればかりか、被害者側を一方的に責め立て、誹謗中傷を繰り返すアカウントの投稿に感謝の気持ちを綴るなど、神経を逆なでするような行為を1年以上にわたって延々と続けています。
民事訴訟の判決後には、判決文の都合の良い部分だけを引用して、まるで原告が敗訴したかのように見える発信も行ないました。その投稿は後日削除されましたが、被告人の身勝手で無神経な投稿によって誤解が生じ、それによってさらなる誹謗中傷を受けることとなり、母も私も、大きな精神的苦痛を感じています。
私には、被告人が自分の責任と向き合わず、Xを用いて、被害者家族のせいで社会的制裁を受けているという構図を作ろうとしているとしか思えません。
被告人は、民事訴訟でも漫画によって社会的制裁を受けているとして、慰謝料の減額を主張しましたが、判決では「医療事故により原告らが受けた損害を検討するにおいて関連がある事実とみることはできない」として退けられました。
また、2025年3月5日に漫画作者である家族が原告となって、被告人に対して起こした債務不存在確認訴訟の中で、被告人は、本件の医療事故について、「過失は無く、医療過誤ではない」と主張しています。心から反省しているのであれば、こんな無責任な主張はできないと思います。
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「毎日診察」
真っ赤な嘘
被告人は、今回の裁判で業務上過失傷害罪の成立を認め、表面上は反省の言葉を述べました。しかし、被告人質問では、母と私が明確に記憶している事実とは異なる明らかな嘘を平気で繰り返しました。
特に、毎日母を診察しに行っていたという話は完全に嘘です。事故が原因で、両下肢に耐え難い痛みが長時間続き、被告人に指示を仰ぐために病棟の看護師さんと一緒に被告人を探し回ったことが何度もありました。勤務時間中にもかかわらず、院内用PHSが繋がらなかったため、やむを得ず、被告人の個人の携帯電話にかけていただいた際、「もう帰宅途中なので、明日でもいいですか」とか「今は対応できない」などと言われたこともありました。
痛みに耐えるしかない母がどれほど苦しい思いをしてきたか、その痛みに耐え続ける母を見守ることしかできない私たち家族がどれほどやるせない思いをしてきたか、被告人は、これまでに一度でも想像したことがあるでしょうか。被告人は、母のことを1日も忘れたことはないと言いましたが、私には被告人の言葉が口先だけの薄っぺらいものにしか感じませんでした。
事故が起きた原因についても自分に責任があると言いながら、A先生へ責任転嫁したり、自己弁護に終始する被告人の態度に、今までに経験したことのないような強い憤りを感じました。
被告人は、母の主治医を外れてから一度も母の病室を訪れたことはありません。また、母に直接謝罪したいという申出などもありませんでした。
事故の後、A先生は、母をほとんど診察しなくなった被告人に代わって、3年以上にわたって主治医を務めてくださいました。
A先生からは、「私も松井先生と同罪です。本当に申し訳ない」と何度も謝罪がありました。強烈な痛みが続いていた時期のことですが、A先生は、どうにかして疼痛コントロールができないものかと右往左往し、謝罪の言葉を延べながら、5時間以上にもわたって痛みに悶える母を励まし続けてくださいました。
母は、A先生に対して複雑な思いがありつつも、心から反省して、自分に寄り添ってくださったという感謝の気持ちもあり、刑事告訴しないと決断したそうです。もし、被告人も、A先生と同じぐらい母に寄り添ってくださったならば、母の処罰感情は、ここまで強いものにならなかったかもしれません。
1年以上にもおよぶ公判前整理手続を経てようやく迎えた公判でしたが、被告人は、弁護側が同意している第三者の医師の供述調書すらまともに読んでいないのではないかと感じました。また、被害者本人である母の供述調書の内容まで否定したり、およそ罪を認めている被告人のものとは思えない他責的な発言や自己弁護の繰り返し、平気で嘘を並べ立てる供述態度には絶望しました。
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被害者は一人
だけではない
母は、被告人の杜撰な手術が原因で生涯自分の足で歩くことができなくなり、生涯おむつを使用しなければ生活できない身体になりました。また、いつ襲ってくるのか分からない痛みに四六時中怯えながら生涯暮らさなければいけません。そして、私は、そんな母の苦しむ姿を見守ることしかできず、母に手術を勧めてしまった罪悪感と後悔に苛まれながら生きていくしかないのです。
被告人の手術による被害者は母ひとりではありません。被告人には、母と同じように重い後遺障害に苦しんだ末にお亡くなりになった被害者が複数存在していることを絶対に忘れてほしくありません。
私は、大切な母の身体の自由を奪っただけではなく、心まで深く傷つけた被告人を生涯赦すことはできません。二度と母のような悲惨な被害者を生むことのないよう、被害者とその家族の気持ちがわずかでも救われますよう、法律で許される最大限の刑罰を被告人に与えていただけますよう、強く求めます。
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この意見書は2月18日にあった公判で被害患者の長女が自らの声で述べた。松井被告はこの声を聞いて何を思ったか。判決は3月12日に言い渡される。
《※1》被告が刑事裁判の公判で自身のアカウントだと認めた。
《※2》被告が当時勤務していた吹田徳洲会病院は2025年1月に被告を診療業務から外した。
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掲載紙面(PDF):
2026年3月7日号(2635号) 1面 (6,542,046byte)
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