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関福大リレーコラム・アートとの出会い

 2026年01月31日 
 私には、発達に特性のあるいとこがいます。学生時代から人との関わりがうまくいかず、長い間、家に引きこもる生活を送っていました。家族として何ができるのか分からなくて、ただ時間だけが過ぎていくような日々でした。

 ある日、私が偶然、刺繍に触れる機会がありました。布に針を落とし、少しずつ形が生まれていく感覚が心地よく、「もしかしたら、いとこにも合うかもしれない」と思い、刺繍のキットを一つ渡してみたのです。無理に勧めたわけではなく、「よかったらやってみて」と軽い気持ちでした。

 最初は、ただの暇つぶしのようでしたが、数日後には「この糸の色が好き」「次はこの模様をやってみたい」と、少しずつ話してくれるようになりました。気がつけば、毎日黙々と針を動かし、作品は驚くほど丁寧で、独自の世界観を持つものになっていきました。

 刺繍は、正解が一つではありません。うまく言葉にできなくても、気持ちを布の上に表すことができます。その時間は、誰かと比べられることも、評価されることもありませんでした。その安心感が、いとこにとって大きかったのでしょうか。

 やがて作品が増え、周囲の勧めもあって、ネットショップを開くことになりました。「売る」ことが目的ではなく、「誰かに見てもらう」ことが一歩だったのだと思います。少しずつ注文が入り、展示会を開くまでになり、今では実家の近くで小さな刺繍店を営んでいます。

 芸術活動は、特別な才能を持つ人のものではありません。ましてや、治療や訓練だけを目的とするものでもありません。誰かが「自分でいていい」と感じられる時間をつくる力があります。いとこの変化をそばで見てきた私は、芸術が人の人生にそっと寄り添う力を持っていることを、日々実感しています。(社会福祉学部社会福祉学科助教・餅原秀希)



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掲載紙面(PDF):
2026年1月31日号(2630号) 2面 (9,775,474byte)
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