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関福大リレーコラム・芸術がひらく、これからの共生社会

 2026年03月20日 
 10年前、小さな挑戦として始めたブレスレットづくりは、今では地域に知られる存在へと成長しました。専門店を構え、地方で紹介されることも増え、作品は多くの人の手に渡っています。けれど、私が本当に大切にしたいのは「売上」や「知名度」ではありません。

 そこにあるのは、「自分の感性が社会に届く」という経験です。

 障害のある人は、しばしば"支援される側,,として語られます。しかし、作品が誰かの手に渡り、「きれいですね」「大切にします」と言われたとき、その人は明確に"社会のつくり手,,になります。それは、自己肯定感を育てるだけでなく、「働く」という意味を新しく捉え直すきっかけにもなります。

 芸術には、心を整える作用があります。色や形に向き合う時間は、自分の内面と静かに対話する時間です。不安や緊張が和らぎ、自分のペースを取り戻すことができます。しかし、それだけではありません。芸術は、新しい就労の可能性を生み出します。福祉と仕事、支援と社会参加をつなぐ橋になるのです。

 もちろん、ここまでの道のりは平坦ではありませんでした。方法を変え、素材を工夫し、何度も話し合いを重ねてきました。多くのスタッフや地域の協力があって、今があります。

 それでも私は、芸術が持つ力を信じています。芸術は人を変えるのではありません。その人の中に、すでにある力を引き出す営みです。

 もし地域のどこかで、自分の居場所を見つけられずにいる人がいるなら、その人にとっての「針と糸」のような存在がきっとあるはずです。小さなきっかけが、人生の方向を変えることもあります。

 芸術は特別なものではありません。誰かが自分らしく生きるための一つの方法です。これからも私は、障害のある人と芸術をつなぐ実践を通して、誰もが役割を持ち、誇りを持てる地域づくりに関わっていきたいと考えています。(社会福祉学部社会福祉学科助教・餅原秀希)

   * * *

 次回は加藤明学長のコラムです。お楽しみに!
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掲載紙面(PDF):
2026年3月21日号(2637号) 2面 (5,696,617byte)
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