《市民病院医療事故多発》執刀医と市に8888万円賠償命令 神戸地裁姫路支部
2025年05月14日
赤穂市民病院の脳神経外科手術で誤ってドリルで神経を切断されて重い後遺障害が生じた患者女性とその家族が、執刀医と赤穂市に損害賠償を求めた民事訴訟で、神戸地裁姫路支部(池上尚子裁判長)は14日、被告らに計約8888万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
患者の女性(当時74歳)は2020年1月、脊椎管狭窄症による腰痛と診断され、同病院で手術を受けた。執刀医が骨をドリルで削った際、誤って硬膜を損傷し、露出した馬尾神経を巻き込んで切断。助手を務めた科長が修復措置を行ったが、女性には両下肢麻痺と膀胱直腸障害、神経障害性疼痛などの重い後遺障害が残った。女性と家族は21年8月、慰謝料と治療費、将来介護費用など約1億4180万円の賠償を求め、執刀医と赤穂市を訴えた。
判決で池上裁判長は、医療ミスが起きた要因について、出血などでよく見えないのに止血をこまめにせずドリルで骨を削り進めたためとし、「注意義務違反の程度は著しい」と認定。「(助手の科長が)水をかけ過ぎたことやスチールバー(切削能力の高いドリル)の使用を指示したことも事故の原因」だとする執刀医の主張を「仮にそのような事実があるとしても、被告の注意義務違反の程度を軽減する理由となるものではない」と採用しなかった。
さらに、執刀医が同病院に入職してから約9か月の間に関わった手術のうち本件を含む11事例が医療事故として検証の対象にされたことを挙げ、「被告医師の技量が稚拙であったことをうかがわせる」と指摘。また、本件医療事故発生後の病院の対応を「患者や親族の立場・心情に十分に配慮し、迅速に説明を尽くしたと評価するには不足があるというべき」と批判した上で「医療事故自体の精神的苦痛にも増して、さらに苦痛を受けた」として、いずれも慰謝料増額の根拠とした。
また、執刀医は裁判で、原告らが作成に関与したウェブ漫画『脳外科医 竹田くん』により「社会的制裁を受けている」として慰謝料の減額を主張していたが、判決は「医療事故により原告らが受けた損害を検討するにおいて関連がある事実とみることはできない」として退けた。
判決を受けて会見した原告側代理人の若宮隆幸弁護士は「偶発的な事故ではなく、基本的なことができていなかったからこそ起こった事故だと裁判所も認めたと認識している。特に重要と考えていた部分について一定程度認められた」と判決を評価した。一方、執刀医は赤穂民報の取材に「まだ判決文を見ていない」としてコメントを差し控え、赤穂市民病院は「判決を真摯に受け止め、引き続き医療安全の推進に努めてまいります」と病院事業管理者の声明を出した。
この医療過誤をめぐっては、昨年12月、神戸地検姫路支部が執刀医を業務上過失障害罪で在宅起訴。今後、裁判で刑事責任が問われる。
* * *
会見や関係者への取材を経て、記事を大幅に加筆しました。(2025年5月14日18時20分)
関連サイト:
【関連記事】いまだ明らかにされない事故原因と再発防止策 事故調報告書「作成していない」
掲載紙面(PDF):
2025年5月17日号(2597号) 1面 (6,289,544byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
患者の女性(当時74歳)は2020年1月、脊椎管狭窄症による腰痛と診断され、同病院で手術を受けた。執刀医が骨をドリルで削った際、誤って硬膜を損傷し、露出した馬尾神経を巻き込んで切断。助手を務めた科長が修復措置を行ったが、女性には両下肢麻痺と膀胱直腸障害、神経障害性疼痛などの重い後遺障害が残った。女性と家族は21年8月、慰謝料と治療費、将来介護費用など約1億4180万円の賠償を求め、執刀医と赤穂市を訴えた。
判決で池上裁判長は、医療ミスが起きた要因について、出血などでよく見えないのに止血をこまめにせずドリルで骨を削り進めたためとし、「注意義務違反の程度は著しい」と認定。「(助手の科長が)水をかけ過ぎたことやスチールバー(切削能力の高いドリル)の使用を指示したことも事故の原因」だとする執刀医の主張を「仮にそのような事実があるとしても、被告の注意義務違反の程度を軽減する理由となるものではない」と採用しなかった。
さらに、執刀医が同病院に入職してから約9か月の間に関わった手術のうち本件を含む11事例が医療事故として検証の対象にされたことを挙げ、「被告医師の技量が稚拙であったことをうかがわせる」と指摘。また、本件医療事故発生後の病院の対応を「患者や親族の立場・心情に十分に配慮し、迅速に説明を尽くしたと評価するには不足があるというべき」と批判した上で「医療事故自体の精神的苦痛にも増して、さらに苦痛を受けた」として、いずれも慰謝料増額の根拠とした。
また、執刀医は裁判で、原告らが作成に関与したウェブ漫画『脳外科医 竹田くん』により「社会的制裁を受けている」として慰謝料の減額を主張していたが、判決は「医療事故により原告らが受けた損害を検討するにおいて関連がある事実とみることはできない」として退けた。
判決を受けて会見した原告側代理人の若宮隆幸弁護士は「偶発的な事故ではなく、基本的なことができていなかったからこそ起こった事故だと裁判所も認めたと認識している。特に重要と考えていた部分について一定程度認められた」と判決を評価した。一方、執刀医は赤穂民報の取材に「まだ判決文を見ていない」としてコメントを差し控え、赤穂市民病院は「判決を真摯に受け止め、引き続き医療安全の推進に努めてまいります」と病院事業管理者の声明を出した。
この医療過誤をめぐっては、昨年12月、神戸地検姫路支部が執刀医を業務上過失障害罪で在宅起訴。今後、裁判で刑事責任が問われる。
* * *
会見や関係者への取材を経て、記事を大幅に加筆しました。(2025年5月14日18時20分)

| <前の記事 |
関連サイト:
【関連記事】いまだ明らかにされない事故原因と再発防止策 事故調報告書「作成していない」
掲載紙面(PDF):
2025年5月17日号(2597号) 1面 (6,289,544byte)
(PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)
[ 社会 ]
市民病院の指定管理料 国の繰出し基準ベースに調整へ 下水道事業の官民連携 赤穂市が意向調査着手 智弁和歌山から意地の1点「きょうの負けを起爆剤に」 市民病院の経営形態移行 市民説明会まとめ〜最終更新
[ 社会 ] 2025年11月23日 市民病院の経営改革説明会 早くも「やり直し」求める声 赤穂市民病院の指定管理構想 事実上の2病院統合 外来・救急を集約 食品ロス削減と特産PR 赤高生が義士祭でおにぎり販売
[ 社会 ] 2025年11月15日 命の尊さ訴える犠牲者たちのパネル
[ 社会 ] 2025年11月12日 舞台『忠臣蔵』内蔵助役 上川隆也さんが赤穂で成功祈願
[ 社会 ] 2025年11月08日 令和7年秋の褒章 坂越の原清さんなど2人に
[ 社会 ] 2025年11月03日 市民病院 再来年春にも指定管理へ 委託先候補に伯鳳会
[ 社会 ] 2025年10月30日 管区超えて緊急配備 2県3警察署が合同訓練
[ 社会 ] 2025年10月29日 「安心して暮らせる赤穂市へ」市民大会で宣言
[ 社会 ] 2025年10月27日 レモン彗星の撮影に成功 坂越の前田邦稔さん
[ 社会 ] 2025年10月27日 第39代赤穂義士娘が決定 義士祭でお披露目へ
[ 社会 ] 2025年10月25日












コメントを書く