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赤穂の昔話・第6話「引き受けたおなら」

 2019年09月07日 
 
 きょうは庄屋の家の嫁取りです。夕方になると、花嫁さんが来るので、朝からてんてこまいのいそがしさです。
 日が暮れた頃、親類の人に迎えられて花嫁さんが着きました。花嫁さんは近所の人たちから、
 「きれいな嫁はんやな」
 「ほんまやな。ありゃ、婿はんも幸せもんやな。もうけもんやで」
 と、いわれるほど美しい人でした。
 式も無事に終わり、お座敷にはご馳走が並べられ、酒盛りの始まりです。花嫁さんは、花婿さんの母親に手をひかれ、酒盛りの座敷に挨拶に出てきました。正面の花婿さんのそばに座りましたが、緊張のため花嫁さんの身体はコチコチです。花嫁さんの後ろには付き添いの女中が座っていました。
 仲人と両親の挨拶が終わり、いよいよ花嫁さんの番です。蚊の鳴くような声で
 「よろしゅうおねがいします」
 と言ったまではよかったのですが、おじぎをした拍子に
 「ブー」
 と、緊張のあまりおならをしてしまったのです。
 花嫁さんは恥ずかしくて顔が真っ赤です。花婿さんもとっさのことで、どうしてやればよいかわからず困っています。
 そのとき、花嫁さんに付き添っていた女中が、大きな声で言いました。
 「いやあ、すんまへんこって。いとはんの一生一代の大事な席で、えらいことしてしもた。どうぞこらえてくださいませ」
 そして、頭を何度もペコペコ下げながら、女中は「プー」とやり、
 「いやあ、また出てしもうた」
 息をころして見守っていた人たちは大笑い。酒盛りはいっそうにぎやかになり、朝まで続いたということです。(赤穂市教育委員会刊『赤穂の昔話 第一集』・「引き受けたオナラ」より)=切り絵・村杉創夢
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掲載紙面(PDF):
2019年9月7日号(2339号) 4面 (8,770,853byte)
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