《市民病院医療事故多発》被告医師に禁錮1年6か月を求刑
2026年02月18日
医療過誤をめぐり業務上過失傷害罪に問われている元赤穂市民病院脳外科医の松井宏樹被告(47)の第3回公判が18日、神戸地裁姫路支部であり、検察側は禁錮1年6か月を求刑した。

起訴状などによると、松井被告は赤穂市民病院に脳神経外科医として在籍していた20年1月22日、脊柱管狭窄症と診断した女性患者(当時74歳)の椎弓を医療用ドリルで切除する手術を執刀。業務上の注意義務を怠り、止血を十分に行わず術野の目視が困難な状態で漫然とドリルを作動させて神経の一部を切断し、患者に全治不能の神経損傷の傷害を負わせた、とされる。
検察側は、「ドリル操作を担当したのも、止血すべきだったのも被告だ。手術の基本中の基本である止血を行うか、あるいは術野の把握が困難な場合にはドリル操作を差し控えれば事故は防げた。過失は極めて重大」と執刀医としての責任を追及。本件医療ミスの約4か月前にも別の患者の手術で、ドリルで首の神経を損傷する医療事故を起こしていることを挙げ、「身をもってリスクを体感していた」と指摘した。その上で、「自らの責任に向き合わず、科長に責任転嫁を図るなど反省に乏しい」として、罰金刑よりも重い拘禁刑を求刑した。
一方、弁護側は、「事故発生時はドリルの先端は見えていたが、ドリルの先端が滑走して神経を巻き込んだ」として、術野の悪化が直接の原因ではないと反論した。「助手を務めた科長が切削力の強いドリルを使えと指示した。(切削部の冷却などを目的に)助手が掛けた生理食塩水の量や吸引が不適切だったため、どこを止血していいのか、わからない状態になった」と科長の補助に問題があったと主張。「指導医は執刀医を補佐し、必要な場合は執刀医に代わってメスを執る義務がある。被告の過失はまぎれもないが、指導医の科長により重い責任がある」として、量刑の考慮を求めた。
被害者参加制度により、被害患者関係者の意見陳述も行われた。被害患者の代理人弁護士は「被告は単に手術が下手なだけでなく、どこをどう削ったらよいのかを十分理解していない。そもそも本件手術を行える技量を有していない。偶発的な事故ではなく、起こるべくして起こった」と医師としての能力の欠如を批判。本件医療ミスを車の運転になぞらえて、「ペーパードライバーがフロントガラスが曇って前がよく見えない中、先の見えないカーブにアクセルを踏み込んで猛スピードで突入し、曲がりきれずにガードレールを突き破って、そこにいた人を轢いた、という状況に等しい」と例え、「医療自体の信頼を揺るがせた責任も重い」と断罪した。
被害患者の家族は「母は、被告のずさんな手術が原因で生涯自分の足で歩けず、おむつを使用しなければ生活できない身体になりました。いつ襲ってくるかわからない痛みに四六時中おびえながら暮らさなければいけません」と深刻な被害の状況を語った。「失敗しても構わないと思っていなければ、あんな乱暴なことはできないと思います。母は手術の実験台にされたとしか思えません」などと述べ、「被害者は母ひとりではありません。二度と母のような悲惨な被害者を生むことのないよう、被害者とその家族の気持ちがわずかでも救われますよう、法律で許される最大限の刑罰を被告人に与えて」と訴えた。
最終弁論に立った松井被告は「手術の事故によって、私は患者と家族に6年もの間、耐えがたい苦痛を与え続けました。患者の神経を傷つけたドリルを握っていたのは間違いなく私です。その責任を否定するつもりはまったくありません。心より謝罪申し上げます。大変申し訳ありませんでした」と被害者関係者へ向けて頭を下げた。
裁判はこの日で結審した。判決は3月12日(木)に言い渡される。
* * *
記事に検察側、弁護側双方の主張を加筆し、主張の比較表を更新しました。(2026年2月19日8時50分)
関連サイト:
【関連記事】被告医師「私一人だけ悪いとなるのはおかしい」
掲載紙面(PDF):
2026年2月21日号(2633号) 1面 (8,494,458byte)
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起訴状などによると、松井被告は赤穂市民病院に脳神経外科医として在籍していた20年1月22日、脊柱管狭窄症と診断した女性患者(当時74歳)の椎弓を医療用ドリルで切除する手術を執刀。業務上の注意義務を怠り、止血を十分に行わず術野の目視が困難な状態で漫然とドリルを作動させて神経の一部を切断し、患者に全治不能の神経損傷の傷害を負わせた、とされる。
検察側は、「ドリル操作を担当したのも、止血すべきだったのも被告だ。手術の基本中の基本である止血を行うか、あるいは術野の把握が困難な場合にはドリル操作を差し控えれば事故は防げた。過失は極めて重大」と執刀医としての責任を追及。本件医療ミスの約4か月前にも別の患者の手術で、ドリルで首の神経を損傷する医療事故を起こしていることを挙げ、「身をもってリスクを体感していた」と指摘した。その上で、「自らの責任に向き合わず、科長に責任転嫁を図るなど反省に乏しい」として、罰金刑よりも重い拘禁刑を求刑した。
一方、弁護側は、「事故発生時はドリルの先端は見えていたが、ドリルの先端が滑走して神経を巻き込んだ」として、術野の悪化が直接の原因ではないと反論した。「助手を務めた科長が切削力の強いドリルを使えと指示した。(切削部の冷却などを目的に)助手が掛けた生理食塩水の量や吸引が不適切だったため、どこを止血していいのか、わからない状態になった」と科長の補助に問題があったと主張。「指導医は執刀医を補佐し、必要な場合は執刀医に代わってメスを執る義務がある。被告の過失はまぎれもないが、指導医の科長により重い責任がある」として、量刑の考慮を求めた。
被害者参加制度により、被害患者関係者の意見陳述も行われた。被害患者の代理人弁護士は「被告は単に手術が下手なだけでなく、どこをどう削ったらよいのかを十分理解していない。そもそも本件手術を行える技量を有していない。偶発的な事故ではなく、起こるべくして起こった」と医師としての能力の欠如を批判。本件医療ミスを車の運転になぞらえて、「ペーパードライバーがフロントガラスが曇って前がよく見えない中、先の見えないカーブにアクセルを踏み込んで猛スピードで突入し、曲がりきれずにガードレールを突き破って、そこにいた人を轢いた、という状況に等しい」と例え、「医療自体の信頼を揺るがせた責任も重い」と断罪した。
被害患者の家族は「母は、被告のずさんな手術が原因で生涯自分の足で歩けず、おむつを使用しなければ生活できない身体になりました。いつ襲ってくるかわからない痛みに四六時中おびえながら暮らさなければいけません」と深刻な被害の状況を語った。「失敗しても構わないと思っていなければ、あんな乱暴なことはできないと思います。母は手術の実験台にされたとしか思えません」などと述べ、「被害者は母ひとりではありません。二度と母のような悲惨な被害者を生むことのないよう、被害者とその家族の気持ちがわずかでも救われますよう、法律で許される最大限の刑罰を被告人に与えて」と訴えた。
最終弁論に立った松井被告は「手術の事故によって、私は患者と家族に6年もの間、耐えがたい苦痛を与え続けました。患者の神経を傷つけたドリルを握っていたのは間違いなく私です。その責任を否定するつもりはまったくありません。心より謝罪申し上げます。大変申し訳ありませんでした」と被害者関係者へ向けて頭を下げた。
裁判はこの日で結審した。判決は3月12日(木)に言い渡される。
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記事に検察側、弁護側双方の主張を加筆し、主張の比較表を更新しました。(2026年2月19日8時50分)

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コメント
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投稿:たろう 2026年02月23日
3
1
投稿:あ 2026年02月20日コメントを書く