部活動中にボール当たり体調悪化 学校は因果関係認めず
2025年09月13日
赤穂中学校で昨年6月、部活動中に野球部のボールがサッカー部の生徒(当時2年)の頭に当たる事故があった。生徒は強い倦怠感や頭痛に見舞われ、事故から1年以上経った今も通院が続いている。
保護者が謝罪と治療費の補償を求めているが、学校側は事故と体調悪化の因果関係を今のところ認めておらず、双方が弁護士を立てて協議している。
事故があったのは昨年6月26日の放課後。ボールが当たった生徒によると、運動場でサッカー部員らが輪になってミーティング中、「危ない」という声が聞こえた瞬間、後頭部左側に強い衝撃を感じた。そのときは何が起きたのかわからなかったが、野球部の打撃練習のボールが頭に当たったと聞いた。跳ね返ったボールが隣にいた部員の腹部に当たり、おなかを押さえて痛そうにしていたという。
生徒に出血は見られず、意識はあった。サッカー部顧問が氷で患部を冷やし、しばらく安静にした上で練習に復帰。救急車は呼ばれず、保護者への連絡もなかった。その日は部活動後に急いで習い事に行く予定があり、車で迎えに来ていた母親に「ボールが当たった」と伝えたが、母親はサッカーボールが当たったものと思い、深刻には受け止めなかったという。
* * *
事故翌日から体調が悪化
生徒の体調に異変が現れたのは翌27日。登校はしたものの体調不良を訴えて体育の授業を見学し、部活も休んだ。28日は2年生になって初めて学校を休んだ。本来なら市総体に出場していたはずの29日に市内の病院を受診して「脳しんとう」と診断され、医師から「もっと早く受診すべきだった」と言われたという。同日、体調確認のためサッカー部顧問から保護者に電話があり、そこで「野球のボールが当たった」と伝えられた。
生徒の体調はその後さらに悪化し、2学期は学校を休む日が増加。11月は一日も登校できなかった。治療法を探して複数の医療機関を受診した中、脳神経外科を専門とする大阪の医療機関が「頭部外傷に起因する起立性調節障害」と診断。保険適用外の治療によって症状が緩和され登校できるようになったが、完調には戻らず現在も月1回の治療が欠かせない。ヘディングが頭部や脊髄への衝撃でさらに病状を悪化させる恐れがあるため部活動はほとんどできず、引退試合となった今夏の西播大会はラスト3分間の出場にとどまった。自転車に乗るときはサドルに座らず立ちこぎするように医師から指導されているという。
* * *
ミーティングに校長も参加
事故原因の説明などを求める保護者と学校との話し合いの場が設けられたのは事故から約4か月が経過した昨年10月下旬。教頭と学年主任、養護教諭などが対応し、校長とサッカー部、野球部の顧問は同席しなかった。「野球ボールが左側頭部に当たった」「事故発生時は野球部、サッカー部とも顧問が練習を監督しており、サッカー部のミーティングには校長も参加していた」などと説明があった。さらに詳しい事故調査と説明を求めると、12月に校長と野球部顧問が同席して2度目の話し合いがあり、▽野球部員が打ったボールがワンバウンドで当たった▽打った場所とサッカー部がミーティングしていた場所とは約70メートル離れていた▽野球部の打撃練習は他部が練習していない朝練習に行う原則としていたが、市総体を週末に控えていたことから特別に放課後に実施した―との説明があった。野球部顧問からは事故発生時にボールが当たったことを把握できていなかった旨の発言があったという。
* * *
報告書に事実と異なる記載
保護者は「校長先生もいながら、なぜ救急車を呼ばず、練習に復帰させたのか。いつもなら些細なことでも顧問の先生から連絡があるのに、なぜ今回はなかったのか。すぐに連絡をもらっていれば、体調が悪化する前に受診できたのにと、とても悔やまれます」と学校の対応を疑問視。また、学校が作成した報告書に「(事故発生日時は)6月29日午前10時50分」「練習後は徒歩で下校した」と事実と異なる内容が書かれていたことにも不信感を募らせている。
学校は赤穂民報の取材に「事故後すぐに保護者に連絡すべきだった」と認め、その他については「弁護士に対応を一任しており答えられない」とした。今回の事故を受けた再発防止策として、同校の危機管理マニュアルに「(状況を見て)熱中症や首から上のケガについては、ためらわずに救急車を呼ぶ」と追加したほか、新たに部活動事故防止マニュアルを作成し、野球部の項目に「部員以外がいる方向にボールを打たない・投げない」と明記した。
掲載紙面(PDF):
2025年9月13日号(2613号) 1面 (6,989,174byte)
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保護者が謝罪と治療費の補償を求めているが、学校側は事故と体調悪化の因果関係を今のところ認めておらず、双方が弁護士を立てて協議している。
事故があったのは昨年6月26日の放課後。ボールが当たった生徒によると、運動場でサッカー部員らが輪になってミーティング中、「危ない」という声が聞こえた瞬間、後頭部左側に強い衝撃を感じた。そのときは何が起きたのかわからなかったが、野球部の打撃練習のボールが頭に当たったと聞いた。跳ね返ったボールが隣にいた部員の腹部に当たり、おなかを押さえて痛そうにしていたという。
生徒に出血は見られず、意識はあった。サッカー部顧問が氷で患部を冷やし、しばらく安静にした上で練習に復帰。救急車は呼ばれず、保護者への連絡もなかった。その日は部活動後に急いで習い事に行く予定があり、車で迎えに来ていた母親に「ボールが当たった」と伝えたが、母親はサッカーボールが当たったものと思い、深刻には受け止めなかったという。
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事故翌日から体調が悪化
生徒の体調に異変が現れたのは翌27日。登校はしたものの体調不良を訴えて体育の授業を見学し、部活も休んだ。28日は2年生になって初めて学校を休んだ。本来なら市総体に出場していたはずの29日に市内の病院を受診して「脳しんとう」と診断され、医師から「もっと早く受診すべきだった」と言われたという。同日、体調確認のためサッカー部顧問から保護者に電話があり、そこで「野球のボールが当たった」と伝えられた。
生徒の体調はその後さらに悪化し、2学期は学校を休む日が増加。11月は一日も登校できなかった。治療法を探して複数の医療機関を受診した中、脳神経外科を専門とする大阪の医療機関が「頭部外傷に起因する起立性調節障害」と診断。保険適用外の治療によって症状が緩和され登校できるようになったが、完調には戻らず現在も月1回の治療が欠かせない。ヘディングが頭部や脊髄への衝撃でさらに病状を悪化させる恐れがあるため部活動はほとんどできず、引退試合となった今夏の西播大会はラスト3分間の出場にとどまった。自転車に乗るときはサドルに座らず立ちこぎするように医師から指導されているという。
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ミーティングに校長も参加
事故原因の説明などを求める保護者と学校との話し合いの場が設けられたのは事故から約4か月が経過した昨年10月下旬。教頭と学年主任、養護教諭などが対応し、校長とサッカー部、野球部の顧問は同席しなかった。「野球ボールが左側頭部に当たった」「事故発生時は野球部、サッカー部とも顧問が練習を監督しており、サッカー部のミーティングには校長も参加していた」などと説明があった。さらに詳しい事故調査と説明を求めると、12月に校長と野球部顧問が同席して2度目の話し合いがあり、▽野球部員が打ったボールがワンバウンドで当たった▽打った場所とサッカー部がミーティングしていた場所とは約70メートル離れていた▽野球部の打撃練習は他部が練習していない朝練習に行う原則としていたが、市総体を週末に控えていたことから特別に放課後に実施した―との説明があった。野球部顧問からは事故発生時にボールが当たったことを把握できていなかった旨の発言があったという。
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報告書に事実と異なる記載
保護者は「校長先生もいながら、なぜ救急車を呼ばず、練習に復帰させたのか。いつもなら些細なことでも顧問の先生から連絡があるのに、なぜ今回はなかったのか。すぐに連絡をもらっていれば、体調が悪化する前に受診できたのにと、とても悔やまれます」と学校の対応を疑問視。また、学校が作成した報告書に「(事故発生日時は)6月29日午前10時50分」「練習後は徒歩で下校した」と事実と異なる内容が書かれていたことにも不信感を募らせている。
学校は赤穂民報の取材に「事故後すぐに保護者に連絡すべきだった」と認め、その他については「弁護士に対応を一任しており答えられない」とした。今回の事故を受けた再発防止策として、同校の危機管理マニュアルに「(状況を見て)熱中症や首から上のケガについては、ためらわずに救急車を呼ぶ」と追加したほか、新たに部活動事故防止マニュアルを作成し、野球部の項目に「部員以外がいる方向にボールを打たない・投げない」と明記した。
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