赤穂民報

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瀬戸の風に誘われて〜阪上梨恵さん〜後編

2014年04月12日

  • 赤穂緞通作家になりたいと赤穂に移住した阪上梨恵さん。手にしているのは自分の機で初めて織り上げた小緞通

    赤穂緞通作家になりたいと赤穂に移住した阪上梨恵さん。手にしているのは自分の機で初めて織り上げた小緞通

 特に用事がない日は午前中3時間くらいは機に向かいます。午後は2時から7時くらいまでかな。

 今織っているのは「嵯峨」という柄です。最初に見た網利剣と同じくらい好きな柄です。鋭角の直線が多くて、赤穂緞通の特徴である「筋摘み」をするからできる鋭さのある柄です。その独自性がよく出ていると思うので好きです。4月くらいには出来上がる予定です。その次は、藍の糸を使った作品を作りたいと思っています。母の里が徳島で、藍染めに縁の深い家なんですが、糸を染めてくれる工房を伯母に紹介してもらいました。

 藍染めや草木染めの糸は時間が経って色褪せたり、染みになったりしても、洗うとすごくきれいになるんです。もともとの状態からは変わってるかもしれないですけど、それはそれで揺らぎのあるきれいな色になっていくんですよ。そういうものは100年経っても残ると思います。

 今はやっぱり、赤穂緞通としてきちんと名乗れるものを作れるように技術を磨かなければならないと思ってます。色々な方の努力があって、今自分が教えてもらうことができているので、まずはそこでちゃんと認めてもらえるものを作れるようになるのが目標です。自分があれ作りたい、これ作りたいっていうのはあるんですけど、まずは基本。しっかりしたものを作れるようになりたい。

 今は色の線が混じったりとか、切りすぎたとか、ここはちゃんと切れてないとか多々あるし、技術的なことに関しては毎日機に向かうたびにしんどいですね。なめらかに仕上がったと思っていても、ほうきで掃いたら表面がぼこぼこだったり(笑)。他の人の仕上がったものを見て、なんでこんなきれいにできるんやろうって頭を抱えることもあります。

 帰りたいとか、やめたいと思ったことはないです。どうしても気乗りがしなくて、なかなかはかどらない日はありますけど。こっちへ来てから、同世代の人たちと知り合いになれて、時々一緒にご飯食べたり、遊びに行ったりと息抜きしています。

 ホームシックはないです。若いときは都会志向で、大学も東京だったし、なんとなく東京でずっと生活していくような気がしていました。でも、会社の転勤で行った香川県がとても住み心地がよくって。東京の狭くて暗いアパートで過ごすよりも、はるかに良い暮らしがあるって気が付いたんですね。

 赤穂はとても暮らしやすいところだと思います。垂水区の出身なんですけど、子どものころから親しんできた瀬戸内の海が見えて、生活に必要なもの、自分にとってほしいものがコンパクトにある感じがとても心地良いです。あと、パン好きなので、おいしいパン屋さんがあるのもよかったです。

 住民票は免許の更新に合わせて昨年夏に赤穂に移しました。修行はずっと続くものだと思いますが、一旦2年間の約束で弟子入りさせてもらってます。その後も緞通を作るのは赤穂でやりたいです。技術だけ身に付けて、神戸に帰ってやるというのは違うなと。

 なぜ赤穂で作りたいかというと、赤穂緞通は赤穂の人が考えて、赤穂でずっと織られてきたものですよね。織り子さんも、文様を考えた人も、多分みんな瀬戸内海の風景を毎日見ていて、この気候の中で暮らしていた人が作って生まれたものだと思うんです。だから、自分も同じ環境に身を置いて、同じ景色を見て作りたい。素材にもこだわって、いつかは自分のオリジナルの模様を織りたいと思っています。


瀬戸の風に誘われて ]

関連サイト:

瀬戸の風に誘われて〜阪上梨恵さん〜前編

掲載紙面(PDF):

2014年4月12日(2083号)4面 (9,056,784byte)


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コメント

初めまして、故郷は離れて見て感慨深く想い入るもの、また新たに住む街もまたその人にとっては新たな故郷となり、住めば都の例えの如しです。信念に基づき日々精進を重ねられて下さい!瀬戸のふるさとを想い遣るご当地ソングとして愛聴頂けたら嬉しいです。 童謡作曲家より

https://www.youtube.com/watch?v=7SSzCClPG7o

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投稿:ヤクトティがー 2018年07月15日


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