赤穂市と伯鳳会が基本協定締結 移行へ向け準備加速
2026年07月31日
来年4月から公設民営となる赤穂市民病院の経営形態移行に向け、赤穂市は31日、指定管理者となる医療法人伯鳳会と基本協定を締結した。
公立赤穂中央市民病院等指定管理者基本協定締結式(2026年7月31日)
協定締結により、伯鳳会は8月1日から事前の施設改修に着工。「公立赤穂中央市民病院」への移行に向けて準備を加速させる。
以下は締結式での牟礼正稔市長、古城資久・伯鳳会理事長のあいさつと記者との質疑の要旨。
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■牟礼正稔市長のあいさつ
「本日、ただいまの基本協定の締結によりまして、赤穂市民病院は令和9年4月1日から『公立赤穂中央市民病院』と名称を変更し、医療法人伯鳳会様による指定管理者制度に移行して、運営していただくことになります。
明日、8月からは早速、赤穂市民病院と赤穂中央病院との再編・統合に向けまして、公立赤穂中央市民病院の開業準備に入っていただくこととなります。また、令和9年4月からの診療開始を円滑に迎えるため、引き続き、さまざまな引き継ぎや調整もお願いしなければならないと考えております。市民生活や患者の皆さまに影響を及ぼすことがないよう、赤穂市及び赤穂市民病院は、医療法人伯鳳会様と協力し、精いっぱい取り組んでまいります。
また、将来にわたって赤穂市の医療体制を維持、継続していくため、伯鳳会様と赤穂市が良いパートナーとなり、公立赤穂中央市民病院を持続可能なものにしていきたいと考えております。何卒、皆さま方のお力添えを賜りますよう、よろしくお願い申し上げます」
■古城資久理事長のあいさつ
「われわれ伯鳳会の赤穂中央病院と赤穂市民病院は、私の父親の代から60年以上にわたって、赤穂市で病院を運営してまいりました。二つの病院は、競い合いながら、また協力し合いながら、60年余りを過ごしてきたわけでございます。
しかし、最近の地域の状況や近隣の公立病院を取り巻く環境、国の医療政策、財政上の問題などを踏まえ、市長との協議を重ねた結果、赤穂中央病院と赤穂市民病院を再編・統合することが、地域にとって最善であるとの結論に至り、本日を迎えました。
新しい体制のスタートは来年4月からですが、指定管理の期間は10年間です。今後5年、10年が経過したとき、地域の皆さまや患者さまに「やはり統合・再編して良かった」と思っていただけるような病院、そして医療提供体制を構築し、継続していくことが、われわれに課せられた使命だと考えております。今後とも忌憚のないご意見をお聞かせいただき、ご指導、ご鞭撻を賜りたいと思います。
地域の皆さま、患者さまには、さまざまなご心配やご不便をおかけすることもあると思いますが、精いっぱい取り組んでまいりますので、どうか温かく見守っていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました」
■記者との質疑
ーー赤穂市民病院は長年赤字が続き、医療事故も相次ぎました。赤穂中央病院との統合によって再出発することについて、現在の気持ちを聞かせてください。
牟礼市長
「赤穂市民病院と赤穂中央病院が統合されることで、赤穂市の医療提供体制は充実すると考えています。
私の公約の一つである市民病院の産科再開については、長年努力してきましたが、医療を取り巻く環境などから実現できませんでした。今回の統合によって、伯鳳会に産科機能を再開していただけることになり、公約の一つが実現することになります。地域の皆さまが安心して出産できる体制を継続できるよう、伯鳳会と協力していきます。
二つの総合病院が一つになることに不安を感じる市民もいると思いますが、全国的に医療従事者が不足しています。市と伯鳳会が協力することで、医療資源の充実も図られると期待しています。2027年4月1日に公立赤穂中央市民病院として確実にスタートできるよう、全力で取り組みます」
ーー統合後は、赤穂中央病院の外来や急性期機能などが市民病院へ移ります。中央病院の入院患者が市民病院へ転院することも想定され、患者に新たな負担が生じる可能性があります。どのように対応しますか。
牟礼市長
「受診する病院が変わるため、患者の皆さまに不安や心配があることは理解しています。運営する伯鳳会には十分に配慮していただく必要があります。
私自身も赤穂中央病院の患者ですが、市民病院と中央病院のサービス水準に大きな差はないと考えています。施設が変わっても、実際に受診すれば不安は解消されるのではないかと思います。市民や患者の皆さまから意見や要望があれば、市と伯鳳会で協議し、対応します。できる限り心配が生じないよう、両者で協力して取り組みます」
ーー市民病院が抱える赤字や債務の返済について、今後の見通しを教えてください。
牟礼市長
「国や県の財政支援を受けながら、計画的に対応していきます。赤穂市にとって非常に大きな財政負担であり、決して小さいものではありません。行政改革を進めながら、市民サービスの低下につながらない形で対応できるよう、精いっぱい取り組みます」
ーー二つの病院を統合して運営することについて、古城理事長の現在の気持ちを聞かせてください。
古城理事長
「60年前と比べて人口も医療政策も変わり、病院の役割も変化しています。私たちだけが何も変わらずに運営を続けることはできません。
病院を考える上では、医療機能、患者の費用負担、交通の利便性が大切です。統合後は選定療養費が見直され、初診時や再診時の負担が下がります。院内処方を始めることで薬代も下がると考えています。
診療科によっては医師の配置が厚くなり、医療機能が向上します。救急車の受け入れ体制も充実すると見込んでいます。医療の質は上がり、市民の費用負担は下がると考えています。
一方、赤穂中央病院の患者が約1.5キロ離れた市民病院へ通わなければならなくなることは課題です。ただ、他地域の病院統廃合や指定管理への移行と比べれば、1.5キロという距離は解決可能な範囲だと思います。
市民説明会では、駐車場やバスの便、赤穂中央病院が運行している送迎バスを継続できるかといった質問が多くありました。交通の利便性を高め、患者が受診しやすくすることが、移行までの半年間で最も重要な課題です。
すべての患者を新病院に集める必要はありません。距離が遠くなるのであれば、自宅近くの医療機関を希望する患者もいると思います。地域の医師会や診療所の先生方と協力し、患者に不便や負担が生じない形で移行したいと考えています」
ーー市民病院では医療事故が起きました。新しい病院では、医療事故にどのように対応しますか。
古城理事長
「伯鳳会でも、過去に一度も医療事故を起こしていないわけではありません。事故を防ぐための対策には、これまで以上に力を入れます。
市民病院について市民や関係者が特に問題視したのは、事故が起きた後の対応や、迅速な対策が十分ではなかったことだと思います。市民病院ではすでに改善が進められていると聞いていますが、その経験を教訓として、事故防止に努めるとともに、発生時には誠実かつ迅速に対応します。
医療事故を完全にゼロにできると約束することはできません。しかし、過失による事故が起きない体制をつくり、発生した場合の対応を徹底することはできます。
院内の風通しを良くし、職員や医師がお互いに率直な意見を出せる組織にします。事故の前には何らかの兆候や情報がある場合もあります。それを早期に把握できる院内体制を整え、安全で質の高い医療を提供したいと考えています」
ーー昨年6月に市長から統合の話を持ちかけられたとき、どのように受け止めましたか。また、2027年4月の移行に向けた進み方をどのように評価していますか。
古城理事長
「まったく予想していなかった話ではありません。コロナ禍の前後に、市民病院の厳しい財政状況と今後の在り方を検討する有識者会議がありました。当時は現行体制で頑張るという結論でしたが、うまくいかなければ次の経営体制を考えるという話も出ていました。
その後の検討でも、新たな経営体制を考えなければ難しいという方向になりました。市民病院の収支を外から見ても、赤穂市の財政規模で抱え続けられる赤字ではないと感じており、いずれ相談があるだろうと考えていました。
私たちは事前に、相談があった場合にどうするかを検討していました。市長が来られた日に、赤穂中央病院の外来、救急、急性期、回復期の機能を市民病院に集約し、中央病院側は療養型と訪問系を中心にする案を提示しました。市長からも、その方向で進めてほしいとの話がありました。
もっと早く判断すべきだったという意見は理解できます。判断が遅れたことで市の財政負担が増えた面はあるかもしれません。一方、拙速に進めれば市民の反発が大きく、市民病院の職員も、もう少し現行体制で頑張りたいという気持ちがあったと思います。個人的には、決して悪いタイミングではなかったと考えています。「最終便には間に合った」と思っています。これから市と伯鳳会が協力して取り組めば、問題を乗り越えられると考えています」
ーー伯鳳会は全国に事業を広げ、大きな法人グループになりました。改めて故郷である赤穂の医療を担うことについて、どのような気持ちですか。
古城理事長
「私は2歳のときに赤穂へ来て、約65年になります。病院を開設してからも60年以上、二つの病院が競争しながら運営してきました。診療機能が重なり、同じような医療機器を双方が購入していた時期も長くありました。
私が20数年前に父の後を継いだ時点では、患者の割合は市民病院が6、中央病院が4ほどでした。民間病院である私たちは医師派遣や設備投資の面でも不利で、このまま赤穂市内だけで競争を続ければ、いずれ伯鳳会が立ち行かなくなると考えました。
そこで、赤穂では現状を維持しながら、人口や医療需要のある地域へM&Aなどで事業を広げました。事業規模が大きくなり、資金力と経営能力を蓄えることができました。その結果、今回の事業を引き受ける力が整ったのだと思います。
市民病院を運営することになるとは、かつては考えてもいませんでした。故郷への錦を飾るという気持ちではありません。ただ、巡り巡って故郷の医療を支えることができるようになったのは良かったと思います。20数年前に亡くなった父も、きっと喜んでくれていると思います。今日帰ったら、仏壇の前で報告するつもりです」
ーー赤穂中央病院から新病院へ移る職員数や、市民病院職員の採用状況を教えてください。
古城理事長
「赤穂中央病院から新病院へ移る職員は、全体の約9割、約380人を見込んでいます。市民病院から新しい体制に残る職員については、現時点で約110人と見込んでいます。【編集部註】
市職員や会計年度任用職員、市民病院で委託業務に従事している職員などからも、伯鳳会で働く人材を採用する予定です。ただ、現時点では必要数に対して約110人不足しています。来年春の新卒採用や今後の中途採用を進めます。
移行時までに、必要な人員をすべて十分な人材で確保できるかは、現時点では断言できませんが、最大限努力します」
【編集部註】会見後、伯鳳会から以下の情報が追加開示されました。
・現在の赤穂中央病院の職員数524人のうち、2027年4月に48人の職員配置を残して476人が公立赤穂中央市民病院に異動予定。
・公立赤穂中央市民病院で必要な職員数は758人(病床稼働率90%を想定)。
・従って採用予定数は282人として面接を行っており、現時点で280人の応募があった。
・職種別の偏りがあるため、応募者全員を雇用したとしても75人程度の不足が生じることが予測されている。二次募集で採用の努力を続けていく。
・不足の多い職種は、看護助手(34人の不足)、調理員(8人の不足)などが見込まれる。
ーー新病院への移行に必要な改修費や医療機器の移設費について、改めて説明してください。
古城理事長
「現在、赤穂中央病院の外来患者は1日約700人、市民病院は約500人です。統合すると約1,200人になります。市民病院は以前、1日1,200〜1,300人の外来患者を受け入れており、建物も約3万3千平方メートルあるため、受け入れるスペースはあります。
ただし、外来患者が減ったことで診察ブースを縮小しています。これを以前の規模へ戻す工事が必要です。病棟でも、事務所や倉庫に転用している場所を再び病床として使うための改修が必要になります。
CTやMRIは市民病院にある台数だけでは足りないため、中央病院からも移設します。中央病院にしかないPET―CTや手術支援ロボット「ダビンチ」なども移設し、ハイブリッド手術室も整備します。
改修費は約11億円を見込んでいます。医療機器の移設費などを含めると、総額で17億〜18億円程度になると考えています。市に負担を求めるのは難しいため、伯鳳会側が『引っ越し費用』だとして負担する考えです。病床を削減する際に利用できる国などの補助制度があり、移転費用の半分程度は補助金で賄えると見込んでいます。残りは伯鳳会が自己負担します。
公立病院として、不採算医療や救急医療などに対する年間3億円余りの公的支援は継続されます。建物の減価償却費約6億円は市が負担し、伯鳳会は使用料として年間約2億6千万円を支払います。現金の支出はありますが、損益上は約3億円改善します。公的支援と合わせると、損益上は約6億円の改善効果があると考えています。
伯鳳会グループ全体の事業規模は600億円を超えています。赤穂だけでこの事業を行うのは難しいですが、グループ全体の規模を生かせば対応できると考えています」
ーー先ほど、古城理事長は「最終便には間に合った」と表現されましたが、議会や市民からは、もっと早く経営形態を移行すべきだったとの声があります。市長は、今回の統合によって『医療体制が充実する』『医療資源も充実する』と説明しましたが、そうであれば、なおさら早く判断すべきだったのではありませんか。
牟礼市長
「2021年度に古城理事長にも委員として参加いただいた赤穂市民病院経営検討委員会を設置し、2022年1月に報告書を受け取りました。報告書では、当面は現行体制で取り組むべきとの方向が示されていました。
2021年度と2022年度はコロナ関連の補助金があり、市民病院は黒字となりました。2023年度は補助金が減少し、そのころから経営が厳しくなりました。2024年度には議会からもさまざまな指摘があり、2025年度には経営移行を担当する組織を設置して検討を進めました。
私は、判断が遅れたとは考えていません。社会経済情勢や国の制度の動きを見ながら進めてきました。自治体病院の経営問題が全国的に顕在化し、国の支援制度が具体化した時期も踏まえれば、著しく遅かったとは思っていません。
ただ、この間に医療事故があり、医師をはじめとする医療従事者の確保が急速に難しくなり、市民病院の経営が非常に厳しくなったことは事実です。それが指定管理者制度へ移行する大きな要因の一つとなりました」
ーー基本協定書には指定管理者が運営する診療科が列記されていますが、最大限努力しても医師や設備を確保できなかった場合は例外とする規定もあります。2027年4月の時点で、すべての診療科を維持できる見込みですか。現時点で維持が難しい診療科はありますか。
古城理事長
「現時点で、廃止を予定している診療科はありません。今後10年間に何が起きるかは分かりませんが、赤穂市と周辺地域の住民にとって過不足のない医療を提供することは、市と伯鳳会の共通認識です。現在の医療水準と診療科を維持し、可能な診療科については強化する方針です。
将来的に地域の医療需要が大きく低下した場合や、どうしても医師を確保できない場合などは、見直しが必要になる可能性があります。しかし、そうならないよう最大限努力するのが現時点での考えです」
ーー経営移行に伴い、主に会計年度任用職員の中に職を失う可能性のある人がいます。市長から伝えたいことはありますか。
牟礼市長
「所属する部署によっては2027年3月末で退職していただかなければならない方が生じます。現在、人事課を中心に、ハローワークや産業雇用安定センターと協力して再就職支援説明会を開いています。市内外の企業から、人材を紹介してほしいという申し出もあります。
市が直接就職先を紹介することはできませんが、求人情報を会計年度任用職員へ提供し、次の雇用につながるよう支援します。企業側のニーズも把握しながら、一人でも多くの方が次の仕事を見つけられるよう取り組みます」
ーー再就職支援説明会では副市長が「心苦しく、申し訳ない」と謝罪しました。市長はどういう気持ちですか。
牟礼市長
「今回の事態によって、会計年度任用職員の方々に退職していただくことになるのは、本当に申し訳なく思っています。退職する方々に次の就職先を見つけていただくことが、私の責任だと考えています。そのための支援に現在取り組んでいます。病院統合によって職を離れなければならない方が生じることを、心苦しく思っています」
ーー市民病院の医療事故では、さまざまな問題点が指摘されました。これまでに誰かが責任を取ったのか、また、今後誰かが責任を取る予定があるのか教えてください。
牟礼市長
「医療事故については、民事上の判決が出ており、それに基づく補償を行っています。一方、院内体制の不備については、安全な医療を提供できるようマニュアルを改定するなどの対応を進めました。その意味では、必要な改善には一定程度取り組んできたと考えています。『責任』にはさまざまな捉え方があります。誰か一人が責任を取れば問題が解決するわけではありません。病院全体で医療安全体制を整えることが適切な対応であり、現在も取り組みを続けています」
ーー誰かを処分するような形での責任の取り方は、今後も行わないということでしょうか。
牟礼市長
「処分する、しないということは、必要な手続きを踏まずに申し上げることはできません。事故当時に病院にいた関係者の多くは、現在は病院に在籍していません。今後どのようにガバナンスを働かせるのかについては、病院側にも確認しなければならず、市長である私だけで決められる問題ではないと考えています」
ーー二つの病院を合わせた病床数が減少します。入院患者への影響をどのように考えていますか。
古城理事長
「赤穂中央病院の許可病床は298床ですが、現在は20床を休床し、稼働病床は278床です。実際の入院患者は約240人です。赤穂市民病院は許可病床360床ですが、入院患者は約160人です。両病院を合わせた許可病床は658床ある一方、実際の入院患者は約400人です。
再編後も赤穂中央病院側に療養病床68床を残します。新病院を399床とすれば、入院患者を制限したり、受け入れを断ったりする事態は起きないと考えています。私は市民病院を360床のままでも運営できるのではないかと考えていましたが、インフルエンザや熱中症が増える時期には病床が不足する可能性があるとの意見があり、399床としました。
これは単なる病床削減ではなく、病床数の適正化です。かつては両病院とも満床に近く、合わせて約700人が入院していた時期もありました。しかし、平均在院日数が短くなり、交通や情報環境も変化しました。患者が必ずしも赤穂市内の病院を選ぶとは限らず、市外から赤穂へ来る患者も減っています。県も西播磨と中播磨を一体的に捉え、高度急性期病院や地域の二次救急を担う病院を再編する方向です。今回の再編は、そうした時代の流れに沿ったものだと考えています。
一方で、会計年度任用職員をはじめ、影響を受ける方がいることには心苦しさがあります。実質的には、経営が立ち行かなくなった一方の病院を救済する側面もあり、職員や市民にまったく影響を与えずに進められる問題ではありません。当事者にとっては死活問題であり、『仕方がない』で済ませてよいとは思っていません。ただ、誰にも何の影響もなく実現できる再編ではなかったと考えています」
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