2026年07月04日
はじめまして。今年度から関西福祉大学社会福祉学部社会福祉学科に着任した石田咲子と申します。私は、犯罪や非行に関する研究をしています。
ここで、「福祉の学部なのに犯罪の研究?」と疑問に思った方ももしかしたらいるかもしれません。実は、犯罪・非行と福祉、この両者は一見関係なさそうにみえますが、実際の事件を紐解いてみると、深く関係していることがわかります。
というのも、犯罪・非行の背景には、貧困や虐待、社会的孤立など様々な福祉的な課題が潜んでいることが少なくないからです。経済的困窮を理由とした万引き(窃盗)を思い浮かべるとわかりやすいかと思います。
また、高齢者の介護を高齢者が行う「老々介護」やその数の増加は近年、日本において社会問題となっていますが、そうした老々介護の果てに殺人に至ってしまう事件も報道などでよく耳にするのではないでしょうか。
さらに、孤立出産といって、誰にも相談できず支援を受けられないまま出産し、その結果赤ちゃんを遺棄した母親が逮捕されるといった事件も後を絶ちません。
非行については、たとえば少年院に入っている少年の多くに被虐待経験があることが明らかになっています(『令和7年版犯罪白書』によると男子では42・6%、女子では63・9%の少年に被虐待経験があるとされています)。
こうして犯罪・非行の背景に目を向けると、「加害者」が犯罪に至る前に少しでも誰かとつながる機会はなかったのだろうか、どこかで福祉の支援につながっていたらこうした事件は防げたのではないだろうか、と思わざるを得ない事例も多くあります。
さらに、刑務所は「社会を映す鏡」とも言われますが、塀の中を見てみると、高齢者や障害のある人はじめ先述したような様々な福祉的課題が背景にある、いわゆる「生きづらさ」を抱えた人が多く収容されている現状があります。
そこで、背景や「生きづらさ」に目を向け、犯罪・非行を福祉の視点から考えることが重要になってくるのです。(社会福祉学部社会福祉学科講師・石田咲子)

掲載紙面(PDF):
2026年7月4日号(2650号)2面 (6,177,572byte)
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