赤穂民報

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コロナで重症化「二度とかかりたくない」

2021年08月28日

  • 新型コロナ重症患者に治療を施す医療スタッフ=赤穂中央病院提供

    新型コロナ重症患者に治療を施す医療スタッフ=赤穂中央病院提供

 変異株のまん延でいまだ収束が見えない新型コロナウイルス感染症。赤穂健康福祉事務所管内でも直近1週間平均の10万人あたり新規陽性者数が第4波を上回った。

 赤穂民報では重症状態から回復した同事務所管内居住の男性(58)に話を聞くことができた。

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――感染の経緯を教えてください

 「4月下旬の夕方に突然すごい倦怠感に襲われました。でも、一晩寝たら回復して。その4日後にPCR検査で陽性と判定されました」

――なぜPCR検査を受けたのですか

 「職場の同僚に感染者が出たためです。でも、同僚からうつったかどうかはわかりません。私よりも感染された方に近い席の同僚は陰性でしたし」

――陽性と判定されてから、どうなったのですか

 「保健所から『宿泊療養にしますか、それとも自宅にされますか』と尋ねられました。微熱程度の症状だけだったので、自宅で様子をみますと。パルスオキシメーター(指先をはさんで血中酸素飽和度を測る機器)を渡されました」

 「その後、酸素飽和度が少し下がり始め、保健所の人から入院を勧められましたが、『自分は体力があるから大丈夫』と断っていました。ところが、陽性がわかってから1週間後、熱が38度台まで上がってきまして、パルスオキシメーターを見たら82%でした。それでも自分としてはそれほどしんどさを感じていなかったので、『大丈夫』と言っていたんです。保健所の人が『赤穂中央病院が受け入れてくれることになったので、どうか入院してください』と強く言うので、そうすることにしました」

 「病院には自分で車を運転して行きました。病室に運ばれるまでの間、ベッドで横になっていましたが、そこからの記憶がありません。唯一記憶があるのは、鼻からすごい勢いで空気を入れられ、それを手で振り払ったことです。その次に気がついたときは約2週間経っていました」

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 男性の了解を得て病院に確認したところ、男性は入院時に血中酸素飽和度が81%まで低下。CTで肺炎が確認され、極めて危険な状態だったという。にもかかわらず、男性が体調の変化をさほど感じていなかったのは、自覚がないまま症状が悪化する「ハッピー・ハイポキシア」と呼ばれる現象らしい。

 「鼻からすごい勢いで空気」を入れたのは高流量酸素療法(ネーザルハイフロー)を施したもので、装着が困難だったことから鎮静して人工呼吸器管理となった。男性の記憶がないのは、鎮静による健忘作用とみられるという。人工呼吸器を装着してから2週間経過しても回復しなかったため気管切開に移行。その1週間後にようやく人工呼吸器を離脱できた。
 肺のダメージを抑えるには患者を一時的に腹臥位にすると有効とされる。看護師らは男性を少なくとも1日2回は仰向けから腹ばいにした。

 「最初は大変でしたが、慣れれば3人で体位を転換できるようになりました」と丸山泰代看護部長代行。懸命の治療の結果、男性は復調。6月上旬に回復期リハビリテーション病棟へ移り、6月23日に退院した。

 人工呼吸器あるいはICUへの入室が必要なコロナ患者は「重症」とされ、本来は重症病床を備える県立加古川医療センター、県立尼崎総合医療センターなど特定病院に転院する原則となっている。しかし、当時は重症病床がひっ迫し、県のCCC(新型コロナウイルス入院コーディネートセンター)による調整でも受け入れ先がまったく見つからなかったという。

 「患者を助けるには、うちで診るしかないと腹をくくりました」とCOVID―19対策チームリーダーの矢部博樹副院長。呼吸器科医長の〓沼裕嗣医師が、内視鏡を用いてシールド越しに人工呼吸器を挿管する技法を考案し、医療スタッフが患者の飛沫を浴びる量を大幅に減らすなど工夫した。同病院では4月から5月にかけて男性を含む4人の重症患者を治療した。

 * * *
――回復されて良かったですね

 「保健所の方々の的確な判断、中央病院の医師や看護師、リハビリのみなさんのおかげで命を救っていただけました。この取材を受けたのは、記事を通して感謝の気持ちを伝えたいと思ったからです」

――感染から退院まで振り返ってどう思いますか

 「自分は元々、感染防止に人一倍気を付けていたほうだと思います。人がまだマスクを着けていなかったころからマスクをしていましたし、消毒もこまめにしていました。生まれたときに健康優良児で新聞に載ったくらい身体が丈夫で体力に自信があり、今まで大きな病気をしたことがありませんでした。だから『コロナにはかからないだろう、かかっても軽症で済むだろう』と思っていましたが、それは違いました」

 「重症化していたときは意識がないので辛さはなかったですが、意識が戻ってから一番辛かったのは痰の吸引です。これは本当に苦しい。体重が12キロ減り、動かなくなった手足を訓練するリハビリも大変でした。スタッフのみなさんが励ましてくれたので頑張れました。でも、今でもまだ階段を上がったり、重たい荷物を持つとしんどいです。当たり前ですが、コロナには二度とかかりたくないです」


社会 ]

掲載紙面(PDF):

2021年8月28日号(2429号)3面 (5,770,893byte)


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コメント

マスクの着用前提としておりますが、運動量に必要となる呼吸量がマスクによって妨げられ、呼吸困難による事故などを引き起こす危険性への配慮が求められるため、安全に運動するために一時的にマスク等を外す場合は2m以上のソーシャルディスタンスを確保するよう配慮しています。また、室内空気について二酸化炭素モニターで監視し、適切な換気を行っております。

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投稿:パワーハウス赤穂 2021年09月04日


感染拡大させない、感染しないことが大事です。ワクチン接種していても感染します。関連施設のジムに通っていますが、ノーマスクの方が見受けられます。特に若い方。その場では言えませんが正直怖いです。医療機関の関連施設ですので、営業するなら使用者のマスクの徹底をよろしくお願いします。

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投稿:ワクチン未接種トレーニー 2021年09月04日


私の兄も50代ですがコロナに罹りました。退院して3ヶ月以上たちましたが後遺症があります。よく「コロナはただの風邪」という人がいますがただの風邪に後遺症がありますか。

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投稿:失礼します 2021年08月29日


貴重な体験談をありがとうございます。

兵庫県も現在すでに入院・宿泊療養調整中や自宅療養で、すぐに入院することが難しい現状です。
デルタ株は感染力も強く、若い人でも重症化しやすいようですね。
他人事とは思わず、今後も気をつけたいですし、医療体制が逼迫している間は特に、自助だけではなく、市や県でできる対策を考えてほしいと思います。

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投稿:市民 2021年08月28日


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