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「日本一小さな博物館」が70周年

2020年10月08日

  • 有年考古館の開館70周年記念展で展示されている発掘調査用具

    有年考古館の開館70周年記念展で展示されている発掘調査用具

  • 開館当時の記念写真=前列左から2人目が松岡秀夫氏。同館提供

    開館当時の記念写真=前列左から2人目が松岡秀夫氏。同館提供

  • 設立の動機などが書かれた自筆ノート=同館提供

    設立の動機などが書かれた自筆ノート=同館提供

 播磨地域の博物館で最も古い歴史を持つ有年楢原の赤穂市立有年考古館が開館70周年を迎え、記念の企画展が行われている。
 主要な収蔵品や発掘に使用した用具、創設者の松岡秀夫氏(1904−85)の自筆ノートなど約300点を展示。同氏と同館のあゆみを回顧する内容となっている。
 松岡氏は昭和20年代、食糧不足に伴う田畑の開墾で地元の遺跡や古墳が掘り起こされる中、散乱していた土器などの遺物を収集。文化財として保存公開する使命を感じ、本業の眼科医のかたわら1950年10月8日に同館を開いた。当初は病院横のヤギ小屋を改築しただけで、訪れた文部省の技官から「日本一小さな考古館」と呼ばれた。当時、県内に公立の博物館はなく、同氏は私財をなげうって発掘調査機器を導入。県内各地の遺跡調査に無償で貸し出し、文化財保護と人材育成にも貢献した。81歳で亡くなる前年まで発掘現場に立ち、論文執筆を続けた。
 秀夫氏の没後は長男秀樹氏が館長を引き継ぎ、88年に収蔵資料1250点が市指定文化財に指定された。2011年に資料と土地、建物のすべてが市へ寄贈された以降は市立施設として運営されている。
 「日本一小さな考古館ー有年考古館開館70周年記念展ー」と題し、同館が西野山3号墳(上郡町)で発掘した三角縁神獣鏡をはじめとする主な収蔵品のほか、実際に発掘調査で使われた測量器具やカメラ、秀夫氏愛用の帽子とピッケルなどを展示。初めて公開される秀夫氏の自筆ノートには、「出土遺物は各人めいめいが秘蔵すべきでなく一纏にして一所に陳列する方が遺物それ自体の価値を増すものである」などと同館設立に至った動機や経過が書かれており興味深い。
 学生時代に秀夫氏の薫陶を受けて考古学の道を進んだ日本考古学協会員の是川長さん(85)=姫路市太市中=は「考古学に関しては一切妥協しない厳しさがあり、最期まで研究心を持ち続けた人だった。一言で言えば頑固親父。でも、誰に対してもやさしさもあった」と恩師の人物像を評し、「有年考古館は松岡先生の功績の象徴」と語った。
 市教委文化財課の山中良平学芸員(33)によると、同館の設立趣意書には、開館と同じ年に施行された文化財保護法に沿い、『破壊されようとしている文化財の保護』が主な目的として述べられているという。考古資料の展示施設としては兵庫県内で2番目に誕生しており、「全国の公立博物館や考古館が本格的に整備され始めるのは1952年の博物館法施行以降で、行政より早く文化財保護に乗り出した功績は大変大きい。展示を通してその足跡を振り返ってほしい」と話している。
 来年1月11日(月・祝)まで午前10時〜午後4時。火曜と12月28日〜1月4日は休館。入館無料。電話49・3488。


文化・歴史 ]

掲載紙面(PDF):

2020年10月10日号(2388号)3面 (9,169,319byte)


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