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関係者証言から見える経営検討委の裏側

 2022年02月12日 
「公立病院での存続」を提言した赤穂市民病院経営検討委員会の資料と議事録
 「現在の経営を継続しても資金不足の解消は困難」「経営形態の変更も含めた抜本的な見直しを決断」といった牟礼正稔市長の意向を受けて設置された赤穂市民病院経営検討委員会。

 議事録から浮かび上がったのは、経営形態の移行は避けられないとの意見が大勢を占めていたにもかかわらず、最終的には「公立病院としての存続」を提言する報告書がまとめられた不可解さだった。関係者の証言からは検討委の「裏側」で物事が動いた様子が見えてくる。

 * * *

「補填続けば市も共倒れ」

 市民病院の経営形態をめぐっては、病院が「第2次改革プラン」を策定した2013年の時点で「現行の経営形態において努力をしても経営指標などの目標が達成されないなど、 地方独立行政法人化への移行が要請される場合においては、移行に向けた取り組みを進めていく」と明記されていた。

 それから約9年。この間、経営コンサルタントを導入して指標を設けて経営改善に取り組んだものの目標を達成できず、資金不足による一時借入金は膨らみ続けた。それでも、病院の内部検討会議は経営形態の移行ではなく現状維持の道を選択。20年度決算で資金不足比率が10%を超え、起債発行に総務省の許可が必要となった。今年度には市が一般会計から2億6000万円を追加補填。市幹部は「今後も補填しなければならない状況が続くようだと、市も共倒れになる」と危機感を口にする。

 * * *

市は指定管理者で腹決めていた

 赤穂市民病院経営検討委の設置にあたり牟礼正稔市長が示した文書には「このまま、現在の経営を継続したとしても、資金不足の解消は困難と判断」「経営形態の変更も含めた抜本的な見直しを行うことを決断した」とある。経営検討委の設置を発表した昨年8月の記者会見で具体的なプランを問われ、「私も考えがまったくない訳ではないが、ここで申し上げるのは差し控える」と含みのある発言をした。

 関係者によると、この時点では牟礼市長は「指定管理者制への移行へ腹を決めていた」といい、指定管理者を公募した場合、「市にとって願ってもない好条件」で手を挙げる事業者の目途もつけていたという。県も了承し、職員をオブザーバーとして送り込むことを決定。こうした市の意向は検討委の委員たちにも事前に伝えられた。

 ところが、実際に検討委が始まってみると思い描いた筋書き通りには進まず、市が検討を求めた「抜本的見直し」からは回を重ねるごとに後退。有識者たちから「経営形態の移行にお墨付き」をもらうはずだった検討委は結果的に「現状維持のお墨付き」を与える場となった。

 最終的にまとまった報告書には、「公立病院として存続することが望ましい」「市の財政支援について是非とも検討を」などと記載された。小児科や放射線療法、牟礼市長が再開を公約に掲げていた産婦人科は「経営改善策」の一環で「診療科見直し(廃止)」の対象に。牟礼市長は「報告書を最大限尊重する」と提言に従う姿勢を表した。

 * * *

医師引き揚げ宣告され白旗

 なぜ、市のお膳立て通りに事が進まなかったのか。複数の関係者が「医師を派遣している大学医局が『指定管理制になれば、継続して医師を派遣できるかどうか保障できない』と水面下で迫った」と証言する。これを事実上の「医師引き揚げ宣告」と受け止めた市は「そんなことになれば、市民病院の医療は崩壊する」と慌て、「白旗」を上げざるを得なかった。

 ある検討委メンバーは「病院はまさに『白い巨塔』。その高くて分厚い壁に赤穂市がはね返されたということ」と語り、「もしかしたら、検討委が始まる以前に勝負はついていたのかも知れない」と推測した。

 * * *

市も市民病院も「ゆでガエル」

 病院によると、2020年度時点の累積欠損金約70億円に対し資本は約82億円あり、「今なら欠損金を資本で相殺できる」という。仮に今後欠損金が増えて差し引きでマイナスになれば、市が追加負担することになる。また、試算では、経営検討委が提案した「最大で6億円程度の収支改善」が仮に50%しか達成できなければ、2024年に市の財政調整基金が底を尽き、その翌年には市のすべての基金が底を尽く。病院は「本館建設費の企業債償還が山を越す2027年度を乗り切りさえすれば…」と見通すが、ピークの手前で市財政が力尽きる恐れもある。

 それでも報告書を受け取った牟礼市長は「市の財政が許す限り手厚い支援を検討していく」「市民生活に影響がない程度まで支援する」と踏み込んだ発言をしている。

 検討委メンバーの一人は、ゆっくりとした環境変化に対応できずに茹で上がってしまう「ゆでガエル」の例え話に市民病院と赤穂市をなぞらえ、「とっくに危険ラインを超えているのに、まだ危機から脱しようとしない。結局は市民の負担が増えるだけにならないか心配」と行く末を案じた。

 * * *

「外圧」や「私心」排除し再検討を

 報告書を読み返したが、検討委が出した結論は『赤穂市の医療を守る』ものというより、『公立病院であることを守る』ものとしか見えない。

 もし、関係者たちが証言するように議論の方向がゆがめられたのだとしたら大きな問題だし、そもそも「指定管理者ありき」で話を進めようとした市の姿勢も問われる。外圧や私心のないフラットな場で、もう一度検討をやり直すべきではないだろうか。
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関連サイト:
【関連記事】「変更」から一転「存続」不可解な協議過程(2022年02月05日)


掲載紙面(PDF):
2022年2月12日号(2450号) 1面 (7,182,952byte)
 (PDFファイルを閲覧するにはこちらからAdobe Readerを入手してください。)


コメント

たけだくんを読んだあとこの記事を読むと色々感慨深い

18  2

投稿:とむ 2023年06月30日

この記事に違和感を感じる部分があります。「県も了承し」と記事にありますが、指定管理者制の関連法令に「県の了承」なるものが必要と記載があるのでしょうか?。原則、地方自治において、「県の了承」を得るようなことは無いのではないでしょうか?。仮に「県の了承」を得るということが必要なら、その部局は、県の「健康福祉部」ですか?。「病院局」ですか?。あるいは「企画県民部」ですか?。「県の了承」という部分だけがとても疑問です。

9  3

投稿:市民 2022年02月15日

素朴な疑問ですが、市民病院を指定管理に引き継ぐ場合、職員は公務員ではなくなるので一旦退職扱いで退職金は市が支払うのでしょうか?そもそも公務員のリストラって可能なのですか?

9  1

投稿:疑問 2022年02月14日

最近の赤穂市って市の経営権を他の企業に丸投げして指定管理者にする事
が多い。何か何処かの団体に乗っ取られているみたいな雰囲気。今回の件も
指定管理者ありきで進められていたみたいなので、どちらの言い分が正しい
のか良くわかりません。市長も市民の為に動いているのか業者の為に動いて
いるのか…?

14  9

投稿:ハーメルン 2022年02月13日

なんとなくだけど「テレビの医療ドラマでは敵役とされる事務長のいる病院」を目指したらいいんじゃないの。モットーは無駄を省いて効率重視、利益が第一。
医療費を稼ぐために富裕層向けにするとか、逆に診療科目を大幅縮小して救急専門にするとか何かに特化してはどうかな。

12  10

投稿:サバイバル 2022年02月13日

一般会計から拠出していながら市の取り組みは弱腰ではないですか。将来、欠損を負担するおそれもあるわけでしょ。市長の公約も現実を前に有耶無耶にならない為、それこそ抜本的に空疎な言葉にならないように大鉈をふるってほしい。

18  2

投稿:いつまでもダラダラと。 2022年02月13日

市内に救急受け入れ病院は、複数のほうが安心です。

37  6

投稿:市民 2022年02月12日

人口減少でパイが減る一方の中、経営改善するということは、保険外診療や検査を増やして患者一人あたりの単価を上げて地道に稼ぐしかないのでは。

9  6

投稿:算盤 2022年02月12日

市民病院を廃止して
中央病院だけにするのでしょうか・・・・・・・・?

10  14

投稿:いちご 2022年02月12日

「市の財政支援を」という発言自体、経営検討委員の資質の欠如を表しています。
大学の医局も最後まで責任を持って医師を派遣するとは思えず、泥船からさっさと逃げ
だすのではないでしょうか。
市長は、毅然と自身の「抜本的見直し」の腹案を実行すべきだと思います。それが政治家のあるべき姿だと思います。

32  3

投稿:廃止か譲渡 2022年02月12日

医療事故の対応といい、もう赤穂市民病院の存在価値はないんじゃないだろうか。
市民も腹を括って、市民病院の廃止を覚悟するべきでは。

37  18

投稿:怒れる市民 2022年02月12日

溺れる病院に抱きつかれて赤穂市が先に沈むようなことはあってはならん。

36  8

投稿:経営の素人 2022年02月12日

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