赤穂民報

関福大リレーコラム・心の体力(幸せの素)を養う(12月17日)

 「わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい」

 1970年代に放映されていたCMコピー。自然の中で火を囲み無言で向き合う父子の姿とともに流れるナレーション。「たくましさ」は「力強さ」。まさに、戦後の復興から高度経済成長へと推進していったエネルギーを象徴する言葉でした。

 様々な社会的課題が複雑に絡まり合い、先行き不透明な現代社会においては「わんぱく」は死語となり、「たくましさ」は「しなやかさ」にとって代わられています。それは、柳の木が強風をもうまくかわしていく様に例えられます。教育の場においても、心のしなやかさや回復力のことをレジリエンスと呼び、その育成が喫緊の課題の一つにあげられています。

 その肝は2つあります。一つ目は「幼い時から日常的に自分で物事の判断をさせ、それによって起こるできごとを受け止めさせる」こと。二つ目は「転び方を覚えさせる」こと。柔道ではまず受け身を練習します。それができるからこそ果敢に挑んでいけるのです。要は、小さな失敗経験を積ませ、それから学ばせ、次のチャレンジのスタートと意味づけ励ますことです。

 「失敗は成功のもと」「七転び八起き」という言葉が聞かれなくなっています。社会全体が子どもの失敗をも許さない非寛容的になっていないか心配されます。

 自分の歩んできた道を、失敗も成功も全て丸ごと受け入れ、自分の過去を受け入れること。そのことを通して「生まれてきてよかった」と実感できるのではないかと思います。その基盤は、人と人との結びつきに支えられた自立。どうしようもないわびしさや悲しみにおそわれることもあります。そんな時は、仲間も自分の道を精一杯歩んでいるのだからと、ふんばること。そんな仲間意識を持ち続けながら自分を支えていくこと。これらは「涙は心の汗」といった協働体験からしか学ぶことができないように思えます。

 赤穂にはこのような「幸せの素」を育てる歴史的風土があるのではないでしょうか。(山口偉一・教職センター教授)

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