赤穂民報

路傍の掲示板に善意の書 続けて30年 男性の思い(1月1日)

 高野の田端(たなばた)地区の市道沿いに人生訓や警句などを月替わりで張り出す掲示板が立っている。こうした掲示板は寺院のそばで見かけることが多いが、この掲示板の近くに寺はない。誰が掲出しているのか。言葉の主に話を聞いた。

 掲示板を管理しているのは近くに住む鎌田正彰さん(78)。1994年から月1〜2回ずつ張り紙を掲出し、今年で丸30年になるという。元は兵庫県警の警察官。仕事柄、事故や事件に接することが多い中、「一つでも不幸な出来事をなくすための呼び掛けになれば」と当時習っていた書道を活かして交通安全や防犯にまつわる標語やメッセージを書き、集落から国道へ出る途中の路傍に張り出すようになった。

 はじめは木を材料に自分で組み立てた「お粗末な看板」に張り出していたが、4〜5年経ったころ、鉄工所に勤めていた近所の男性が「もっとええの作ったる」といってひさしの付いたカーボン製の掲示板を無償で新調してくれた。

 半分に切った模造紙に、たっぷりと墨をふくませた筆を走らせる。行間の目安に鉛筆で引いた線はあるものの、下書きなしで一気に書き上げる。題材は標語以外にも金言や名言などさまざま。新聞や雑誌で読んで感銘を受けた言葉があれば書き留めておく。

 春と夏、秋、年末の年4回ある交通安全運動期間には必ず交通安全の標語を書く。鎌田さんは39歳のとき、妻の好子さんを不慮の交通事故で亡くした。また、自身も2年前、日課としている通学路の見守り活動へ向かう途中、信号無視の車に横断歩道ではねられて重傷を負った。今も足に痛みが残り、交通安全に人一倍強い思いを持っている。

 妻に先立たれた後、ひとり親で5人の子を育てた。孫の数は合計12人を数える。「子や孫だけでなく、誰もが幸せに暮らせる安全で明るい世の中であってほしい」。そうした思いを筆に込め、今年も言葉をしたためる。

(善意の掲示板を書き続けて30年になる鎌田正彰さん)

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