赤穂民報

関福大リレーコラム・よく生きる(3月4日)

 前回は、哲学と教育、とくにフランスの哲学教育についてお話ししました。今回は、哲学のもっとも重要な問題、「生きる」とはどういうことかを古代ギリシャの哲学者ソクラテスの発言から考えていきましょう。

 紀元前399年、ソクラテスはアテナイの法廷に告発され、死刑宣告を受けました。罪状は、国家公認の神々を拝まず、既存の道徳に対する批判活動により青年たちを腐敗させているということでした。

 このような不正な告発により死刑の判決を受け、獄中にあったソクラテスに対し、その友人クリトンは、「このまま刑死してしまうことは、正しいことではない」と進言しました。すると、ソクラテスは、「一番大切なことは単に生きることそのことではなくて、善く生きること」そして、「善く生きることと美しく生きることと正しく生きることとは同じだ」と自分の人生の根本原則を主張しました。

 西洋哲学史においてもっとも有名な言葉のひとつですが、このソクラテスの主張を私なりに解釈するなら、ただ単に生きることや自らの欲望を満足させながら生きることは善い生には値しないということです。人間にとって、自らを偽らないこと、他者に対しては誠実かつ親切であること、そして自らの人生において実現したい高い目標を持ちながら、自己実現をしていくことが重要ではないかと考えます。そして、それが、ソクラテスの主張する「善く」「美しく」「正しく」生きることの追究につながるのではないでしょうか。

 わたしたちはこの世に生を受け、その命が尽きるまでさまざまな経験をしながら生きていきます。しかし、仕事、育児などに追われ、生活を送るだけで精一杯かもしれません(実際、私自身もそうかもしれません)。そのような慌ただしい日常のなかでも善く生きるための努力を忘れないで続けていきたいものです。(中田浩司・教育学部児童教育学科講師)

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