赤穂民報

関福大リレーコラム・心のふるさと、播州赤穂(11月19日)

 「大石(内蔵助)さんの日には雪が降る」

 明治生まれの祖母の口癖でした。私のふるさとは相生市相生です。赤穂は峠を越えた隣街という以上に、伝統と文化の香り漂う義士の街でした。

 義士祭には、友達と連れだってオレンジと緑色のぎゅうぎゅう詰めの臨時列車で行きました。駅から城までの通りの両側にはハイカラなお店と格子戸が残る家屋が混在する「城下町」の光景が広がっていました。その行きつく先には、もちろんお城があるのですが、もう一つの憧れ、お堀の向こう側にある洋館、「アカコウ」(赤穂高校)がありました。

 赤穂は憧れの高校のある街、学問の街でもありました。改札口で通学定期を駅員さんにちょいみせをして、黒の革鞄を小脇に挟んで赤穂の大通りを歩くこと、これが異常にかっこよくみえました。

 それから、半世紀以上が経ち、縁をいただいて関西福祉大学にお世話になることになりました。姫路に住んでいる私にとって、通勤途上のふるさとの海、高取峠、千種川岸から赤穂駅と続く道は、セピア色のアルバムをめくっていくような空間となっています。

 ところで、人は土地と時代の産物であり、青春時代は第二の誕生、母校は心のふるさとと言われます。赤穂というたぐいまれな義士と人情味あふれる風土をもつ街で、青春時代を過ごした学生はやがてそれぞれの目指す場所に旅立っていきます。しかし、この街に愛されて、この街を愛した記憶は、一生その学生を支えていくことでしょう。

 本学のモットーは、建学の精神に裏付けられた「面倒見の良い大学」です。人の温もりの中で大人への道程を歩んだ体験は、想像力豊かで人の痛みのわかる思いやりのある人格を育てていくことでしょう。山あり谷ありの人生で、第二の誕生の地、心のふるさとで過ごした歳月を咀嚼しながら意義ある人生をおくっていってくれることでしょう。

 私が少年の時代に感じた赤穂の輝きは、大学のある街として、そのコクを深めているように感じられます。(山口偉一・教職センター教授)

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