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【社説】この協定では市民の不安は払拭されない(12月5日)

 高野の安定型産廃最終処分場設置計画をめぐり、明石元秀市長は「市民の不安が払拭されない限り反対」としているが、市が事業者との締結へ向けて公表した環境保全協定案は、市民の不安を払拭するにはほど遠い内容だ。
 協定案には、周辺環境や水質に変化や異常があった場合、処分場の操業を停止する条項があるが、「事業者に原因があると確認」することが条件に加えられている。市産業廃棄物担当によれば、この「確認」を行うのは市、県、事業者だという。つまり、何か異常があっても、市や県、事業者が「事業者に原因あり」と認めない限り、操業は止まらない。
 仮に、事業者に原因があると確認されたとしても、その問題を解消する期限は何の取り決めもない。事業完了後の水質検査で管理目標値を超えた場合は「速やかに搬入産業廃棄物を全量除去すること」と定めるが、「速やか」というような、解釈幅のある文言が使われている。
 市は「協定に期限や罰則を設けることは難しい」(同担当)と言う。
 しかし、施設使用期限を具体的に定めた公害防止協定の法的効力が争点となった裁判で最高裁は、「法的拘束力を否定することはできない」との判決を下している。つまり、法令を超える厳しい規制基準を協定に盛り込むことは不可能ではない。
 何の役にも立たない「紳士協定」にしないためには、少なくとも各条項に着手と完了の期限を設定する必要がある。そして、期限内に問題を解消できなければ、処分場を廃止して全量を除去するというところまで定めておくべきだ。また、除去の方法や場所について、あらかじめ事業者が市に計画を提出することも盛り込みたい。
 産廃処分場が公害問題を引き起こした事例は全国各地でみられるが、それらはすべて計画段階では「安全」だとして行政が設置を許可したものだ。その中には自治体と事業者との間で協定を結んでいたものもあるが、事業者が責任を認めなかったり、約束を守らなかったりで、結局裁判になることがほとんどだ。そして、判決が出て強制執行されるまで公害は出続ける。
 協定によって市民の不安を払拭することが本当に可能なのか、疑問に思えて仕方がない。

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