赤穂民報

私のこだわり(3)金魚の品種改良(9月19日)

 
◆金魚愛好家・榊誠司さん(78)=新田=
 * * *
 金魚は春の大潮の日に産卵します。昭和50年頃、たまたま黒が薄い仔が生まれ、さらに毎年、交配を繰り返したら、金の柄が出た。「これや!」と思ったね。日本の金魚はほとんどが赤と白。だったら私は金銀の金魚を作ってやろう、赤穂の天然記念物を作ってやろうやないかと考えました。
 そうやって生まれたのが「穂竜」です。赤穂の「穂」と、中国で「出目」を指す「竜」。稲穂の「穂」も意味に加えました。体が丸く、銀色をベースに金色の柄がバランス良く配色され、鱗は真珠のような「パール鱗」。これが穂竜の定義です。
 赤穂市民病院で検査技師をしていた45年ほど前、職場の事務の人に見せてもらったエンゼルフィッシュに感動して熱帯魚を飼い始めたんですが、冬にものすごく光熱費がかかる。それで金魚にしようと。静岡まで買いに行った「黒出目オランダ獅子頭」2匹が、穂竜のルーツになりました。他の金魚のエサまで食うのに腹が立って一度は手放したんですが、同じ時期に飼った人が立派に育てているのを見て取り戻しました。
 銀の部分は黒から空色まで、金は錆色から黄色までいろんな色が出る。大きくなるにつれて選別し、「これ」と思うものを大きくするんです。いまの色と形になったのが平成元年頃。6年に「第1回金魚日本一大会」の「その他の部」で優勝し、「穂竜」の名前が全国に広まりました。
 8年前に結成した「穂竜愛好会」は現在178名の会員がいます。「穂竜」の商標登録も取りました。まだまだイメージ通りではなく、完成まで8〜9割といったところ。何千匹も生まれる中で品評会に出せるのは、ほんの10匹ほどです。美人というか、理想の金魚ができると感激しますよ。ああこれ、人間やったら彼女にするのになあ、って。次の目標は、緑の金魚「緑竜(りょくりゅう)」を作ること。もう20年以上、取り組んでいます。
 苦労が報われること? ないねえ。優勝しても「うれしい」よりは「やれやれ」。なんせお手本がないから、毎年、毎日、「これで大丈夫かなあ」と心配することばかりです。稚魚の時期は一日に4回餌をやるんです。水温も調節しないといけないし、家を空けられない。旅行? ほんなもん、行かれへん(笑)。
 何回もやめようと思ったけど、人がせんから私がするんやと思うし、人生の貴重な時間とお金を費やして、今までなにしとったん? となるので、やっぱりやめられない。結局、私にはこれしかないんでしょうね。

(「赤穂の地金魚」として「穂竜」を創り上げた榊誠司さん)

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